知らない番号からのビデオ通話。繋がった瞬間、映像に映っていたのは——私の、部屋だった。

夜中の二時過ぎのことだ。残業が続いた一週間で、週末はひとり部屋でぼうっとしていた。シャワーを浴びて、コンビニで買ったビールを一本だけ飲んで、スマホをだらだら眺めていた。SNSをスクロールして、誰かの投稿に「いいね」を押して、また別の動画に移る。気づいたら深夜の二時を回っていた。

私の部屋は1Kで、デスクを窓際に置いている。椅子に座ると背中側に部屋の入り口がある。引っ越してきた頃、少し落ち着かなかったけれど、窓の外が見えるほうが気分がいいし、鍵はちゃんとかけてある。ドアの音にさえ気をつければいい、とそう思っていた。

スマホが震えた。画面には、知らない番号からのビデオ通話の着信が表示されていた。普段なら無視する。迷惑電話だろうと思う。でもその夜は、なぜか指が滑るように動いて、応答してしまっていた。

映像が繋がった瞬間、暗かった。ほとんど何も見えなかった。でも目が慣れてくると、見覚えのある輪郭が浮かびあがってきた。本棚の背表紙。デスクの端にある電源タップ。床に置きっぱなしにしていたコンビニの袋。

私の部屋だった。

どこから撮っているのか、すぐには分からなかった。アングルが少し高く、天井近くから俯瞰するような画角で、部屋全体が収まっていた。デスクが映っていた。椅子が映っていた。椅子には、人が座っていた。

背中しか見えなかった。その人はスマホを持って、画面を見つめていた。私は、自分がいまスマホを持っていることに気づいた。デスクの上に、コンビニのビール缶があった。飲みかけの。映像の中のデスクにも、同じ缶があった。

映像の中の人物が、ゆっくりと顔を振り返らせた。私は通話を切った。

部屋の明かりをすべてつけた。クローゼットを開けた。バスルームのドアを確認した。誰もいなかった。震える手でもう一度、着信履歴を確認した。その番号から最初に着信があったのは、昨日の午後三時台——私がまだ会社にいた時間だった。

あの映像が、「今」ではなかったとしたら。それとも「今」だったとしたら、カメラはまだ、どこかにあるのだろうか。部屋を見回した。背中側の、入り口の方向を——私は最後まで振り返ることができなかった。

この怪談の怖さは?

怖メーターでは、ホラー作品の怖さをユーザー投票で数値化しています。この怪談を漫画化したものをSNSでも公開中。あなたの「怖さ」の感じ方を、ぜひ投票で教えてください。